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夏場だからこそ知っておきたい!
「バッテリー」と「温度」の関係(前編)

いよいよ夏本番。クルマで遠出する機会も何かと多いはず。そこで、EVのポテンシャルを引き出すためには、バッテリーのことを正しく知り、どう付き合えばいいのか……今回は、意外と知らない「バッテリー」と「温度」の関係についてご紹介します。

BYD Auto Japanのアフターセールス技術部門 シニアアドバイザーの三上龍哉さん

 例年よりも厳しい暑さが予想される今年の夏。人にとってはもちろん、EVにとっても過酷な季節がやってきました。しかし、大事なのは、正しく知識を学ぶことです。では、そんな夏(もしくは冬)に我々は、どのようにEVのバッテリーと向き合うべきか、今回は、専門家の方を直撃してみました。

 横浜の大黒埠頭にある「大黒PDIセンター」でお話をお伺いしました。

大黒PDIセンター

 BYD Auto Japanで技術部門のシニアアドバイザーを務める三上龍哉(みかみ・たつや)さんは、一見すると「頑固な技術畑の方」にも見えましたが、お話が始まると、電気自動車に搭載されるバッテリーについて、ユーモアを交えながら、非常に分かりやすく解説してくれました。

——電気自動車のバッテリーについて、あらためて教えてください。

三上さん「電気自動車におけるバッテリーは、ご存知の通り車両を走らせるためのモーターを駆動させる動力源で、常に充電と放電を繰り返す非常に過酷な環境に置かれています。

多くの電気自動車に搭載されているバッテリーは、みなさんがお使いのスマートフォンなどにも使用されているリチウムイオン電池が採用されています。これはBYDの車両も同様で、BYDのリチウムイオン電池には安全性が非常に高い『リン酸鉄リチウムイオン電池』を採用した『ブレードバッテリー』が採用されています」

リン酸鉄リチウムイオン電池の構造(左。LFP)と一般的なリチウムイオン電池の構造(右。NCM)の違いを自作のイラストで解説。

——リン酸鉄リチウムイオン電池と、一般的なリチウムイオン電池の違いは?

三上さん「従来、電気自動車に利用されてきたリチウムイオン電池は、三元系と呼ばれるもので、図のようにミルフィーユ状に重ねられた材料の合間にリチウムイオン(図では赤丸で表示)が収まっています。そして、充電することでリチウムイオンが放出されるのですが、充・放電の繰り返しでリチウム以外の材料が不安定になり、その結果、酸素が分離して、バッテリー内部でガス化してしまいます。これは安全性の面でも、耐久性の面でも大きな課題です。

一方、ブレードバッテリーに採用されているリン酸鉄リチウムイオン電池では、安定的な材料の中にリチウムイオンが収まっており、充電によってリチウムイオンが放出され、充・放電を繰り返しても他の材料が不安定になるリスクが低く、その結果、酸素がガス化にしにくくなっています。まさにこの酸素こそがバッテリー容量低下の要因であることから、酸素がガス化しにくい=バッテリーの耐久性に大きく貢献していている、ということになるのです」

【参考】ブレードバッテリーについて

BYDの正規ディーラーではバッテリーの状態などを詳しくモニタリングできるツールを配備

——リン酸鉄リチウムイオン電池は熱を持たないということでしょうか?

三上さん「いえ、このように非常に丈夫で安全性の高いブレードバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池)であっても、充・放電(走行)を繰り返すことで発熱するということに変わりはありません。

バッテリーへの充・放電は化学反応を利用しているため、作動できる温度範囲や充・放電に適した温度範囲があります。つまり、バッテリーの温度は、高すぎても低すぎても本来の性能を発揮しにくくなってしまいます」

実は走行中も充電中もバッテリーの温度は常にモニタリングされている

 このように、電気自動車を開発している各メーカーはバッテリーの温度を適切な状態に保つためにさまざまな対策を講じているワケなのですが、BYDはどのような対策をしているのか……ということについては、後半で深掘りしていきたいと思います。

(取材:2023年7月)