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BYD Manufacturer Stories.

vol. 3
クルマづくりを支える世界トップレベルの金型技術とは?
(後編)

デザイナーと議論を交わし、妥協せず作っていく

BYDの先進的なデザインを支える金型メーカー、「TATEBAYASHI MOULDING株式会社(以下TMC)」。
前編に続き、今回も代表取締役社長である髙草木健一さん、執行役員の川村幸夫さん、工場長の秋元孝司さんのお三方にBYDのクルマづくりに対する考え方などをお伺いしてきました。
グループ傘下となった2010年当時は物足りなさを感じていたクオリティも、この10年ほどで圧倒的なレベルアップを果たしたというBYD。特にデザイン面では海外メーカーでも手腕を振るったデザイナーを招へいするなど、大きく進化を見せています。

※中国 深圳にある BYD デザインセンター

そこで問われるのが金型メーカーとしての技術力と話す社長の髙草木さん。デザイナーが描いたデザインを実現するために、開発・設計段階からお互いにやり取りを重ね、妥協することなく議論を重ねるそうです。

「通常、一般的な金型メーカーというのは、クライアントから依頼された形状に合わせて金型を作ります。そのため、実現できる形状へ落とし込むのはクライアント側がやるというのが一般的でした。ただ、わが社は長年培ったノウハウがあるので、設計段階からアドバイスをしながら、どうすればそのデザインを実現できるのか密に連携をとりながら作っています」(髙草木さん)

現在は世界各国にネットワークを広げているBYDだけに、金型製作のスピード感も求められているそうで、通常1年から1年半くらいはかかる製作期間を半年~8か月程度で完成させるようにしているとのこと。これも、蓄積された技術と経験がものをいうポイントと言えそうです。

※執行役員の川村幸夫さん

「スピード感だけでなく、品質の高さ、妥協のなさも今では国内メーカーよりも上かもしれません」と話すのは川村さん。

「例えばドアパネルなどは、通常のぞき込まなければ見えないドアの内側部分(ドアを開けたときにわずかに見える部分)などまでシワができないようにと言われています。それだけでも大変ですが、ドアの深さ(ドア幅の厚み)も国内メーカーのものよりも深くなっているので、深さを実現しながら、シワを排除するのに相当苦労しましたね」(川村さん)

通常、目に触れにくい部分にも、妥協することなくこだわることでクルマ全体のクオリティをアップしているというワケなのです。

現場と働く人に滲む、ものづくりのプライド

※率先して、筆者ほか取材陣を案内してくれるみなさん

「それでは次は工場内をご案内しましょう」(髙草木さん)

※金型のベースとなる大きな鋳物

自動車の組み立て工場などは見たことがある筆者ですが、金型工場の見学は初めて。そこでまず目に飛び込んできたのが、金型のベースとなる大きな鋳物です。

ひとつの金型で何十万台という車両の部品をプレスするということを考えれば当然かもしれませんが、実際に目の当たりにするとその迫力に圧倒されます。

この鋳物をまずは大きな切削の機械にセットし、入力したデータ通りに自動で削っていきます。ただ当然ながら機械任せで削って完成、というワケではなく、最終の仕上げには熟練の技を持ったスペシャリストの手が加えられます。

※仕上げは人の手で入念に行う

また金型を製作するにあたっても、材料が鉄なのかアルミなのかで作り方は当然変わってきますし、同じ材質でもどこで作られた材料なのかによっても、微妙に仕上がりに差が出るんだとか。TMCではその辺りのノウハウも当然豊富に持ち合わせているため、その金型がどんな工場で使われて、どんな材料によって作られるのかといった部分まで加味して製作しているというから驚きです。

そうやって多くの人の手を経て完成した金型ですが、当然ながら出荷前には入念な試打ちが実施されます。インタビュー中に定期的に鳴り響いていた轟音こそ、この試打ちのプレスの音であり、最終的なOKが出るまで300~400枚ほど実施するそうです。

※出荷に至るまでにはスキャナや職人の手によって厳しいチェックを経る

テストでプレスしたボディパネルは3Dスキャナを用いた三次元測定はもちろん、実測による寸法の計測も実施。取材時に計測していたドアパネル1枚で2,000~3,000箇所にも及ぶ測定を実施し、寸法にくるいがない状態まで職人の手によって微調整がなされてようやく出荷となるとのこと。

ちなみに通常の自動車メーカーはCMM三次元測定で判定することが一般的ですが、3Dスキャナも取り入れ、BYD側からの厳しい要望にも対応しているようです。この辺りにもTMCのこだわりが見られます。

このように厳格な基準によって生み出されているBYDのボディパネルの金型。髙草木さんは「国内メーカーの金型造りよりも大変ですよ。」と語りますが、BYD側の“TMCならできるだろう”という全幅の信頼と、TMC側の“職人魂”によって成り立っているとも感じられ、「日本のものづくりの底力」を垣間見ることができる素晴らしい取材となりました。

※ものづくりについて、本当に楽しそうにお話しされるのが印象的でした

BYDが日本にも導入されることが決定したことで、自社が手掛けた製品を間近に見る機会が増えるのは嬉しいと話してくれた髙草木さん。みなさんもBYDの車両に触れるときには、普段目に触れない部分もチェックしていただき、そのこだわりとクオリティの高さを実感してみてください。

(取材:2022年9月)

PROFILE

小鮒 康一 Koichi Kobuna

国産車好き自動車ライター。1979年生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後にフリーランスライターへ。国産旧車に造詣が深いが、現行車に関しても、変わらずアンテナを張り続けている。今年春まで電気自動車(2代目日産リーフ)を所有していた。