みなさんこんにちは、自動車ライターの小鮒康一です。
まもなく日本への導入が予定されているBYDの電気自動車である「BYD ATTO 3」、「DOLPHIN」、「SEAL」の3車種には、BYDで新たに開発した「e-Platform 3.0」なるものが採用されています。
今回はこの「e-Platform 3.0」について、どんな特徴があるのか、かみ砕いて解説していこうと思います。
これは、クルマの土台や基礎となる部分のことを指します。BYDのクルマに限らず、どんなクルマにもこのプラットフォームというものは存在しており、この土台部分の良し悪しが、クルマ全体の仕上がりにも大きく影響を及ぼす、非常に重要な部分というワケなのです。
そんな重要な役割を持つプラットフォームですが、BYDのクルマに採用されている「e-Platform 3.0」は、「電気自動車専用のプラットフォーム」として開発されている点が、大きな特徴。
そもそもエンジンや排気管(マフラー)を持たない電気自動車ですから、それらの搭載を考慮する必要がないため、非常に自由度が高いものとなっています。
また過去にご紹介した、高い安全性を誇るブレードバッテリーとバッテリーパックを床面に敷き詰めてプラットフォームの一部とすることで、高度な車体剛性と安全性を実現。設計段階からバッテリーを組み込むことで、バッテリーの搭載スペースによって荷室や室内空間が犠牲になる、ということもありません。
エンジンやマフラーのスペースがないことで、フラットな床面と長いホイールベースを確保し、広い室内空間と自由度の高い車両デザインを両立して実現しています。
そして地味ながら見逃せないポイントが、モーターや制御システムを集積して、効率化している点です。
これは、バッテリーやモーター、制御ユニットなどの主要コンポーネンツを自社で開発・生産しているBYDならではの特徴で、電気自動車を司る8つのユニットを可能な限りひとまとめとした「8イン1電動パワートレイン」を採用しています。
これによってパワートレインの省スペース化を実現し、決められた全長の中でより大きな割合を室内空間に割くことができるだけでなく、配線類も最小限で済むため、コストや重量も削減できるというメリットがあります。
たかが配線、と思われるかもしれませんが、クルマには人間の血管の如くさまざまな場所に配線が張り巡らされており、すべてを合わせるとその長さは2kmから10km前後とも言われており、実はバカにならない量となっているのです。
このようにBYDのe-Platform 3.0は、電気自動車に特化したプラットフォームとすることで、安全性やデザイン性、効率性などさまざまなメリットを複合的に生み出した最新鋭のものと言えるのです。では次回はもう少しその特徴を深掘りしてきたいと思います。
(取材:2022年11月)
PROFILE
小鮒 康一 Koichi Kobuna
国産車好き自動車ライター。1979年生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後にフリーランスライターへ。国産旧車に造詣が深いが、現行車に関しても、変わらずアンテナを張り続けている。今年春まで電気自動車(2代目日産リーフ)を所有していた。